台湾国家人権博物館特別展 私たちのくらしと人権

台湾人権の歴史

1945~2021

1945

1945

日本敗戦。第二次大戦終結。51年間にわたる日本の台湾統治が終わる。
8/29 蔣介石が陳儀を台湾省行政長官として任命。
9/1 台湾省行政長官公署成立。中華民国政府が台湾を接収。

1946

大陸で国共内戦が本格化。陳儀が台湾全土で「漢奸狩り」。​​​​日本語を禁止し、中国語を公用語とする急進的な言語政策を実施。台湾人の政治参加と言論が制約を受ける。

1947

1947

二二八事件。2月27日、台北市で闇タバコを販売していた台湾人女性に対し、取り締まりの官吏が暴行を加え、さらに通行人を誤って殺害する。翌28日、抗議のために市庁舎に押し寄せた民衆に憲兵隊が発砲したことが引き金となり、台湾住民の憤怒が爆発。大規模な武装蜂起に発展したが、3月8日には中国大陸からの増援部隊が台湾に上陸、台湾全土で大虐殺が始まる。

1948

5/9 南京で「動員戡乱時期臨時条款(反乱鎮圧動員時期臨時条項)」公布、中華民国憲法が規定していた民主的政治体制が形骸化
12/10 国連総会で「世界人権宣言」採択、中華民国政府も調印

1949

1949

4/6 四六事件が発生、政府が台北市で多数の学生を逮捕
5/19 戒厳令を中国大陸から台湾全島へ拡大実施、一般市民も軍事法廷で裁かれる
5/24 立法院で「懲治叛乱条例(反政府活動弾圧に用いられた政治的な特別刑法)」可決
10/1 中華人民共和国建国
11/20 『自由中国』雑誌創刊(写真)
12/7 中華民国政府が台湾に移転

1950

5/23「戡乱時期検粛匪諜条例」を制定、左派分子や共産党スパイの摘発を名目として弾圧が行われる
12/1 新聞の新規発行禁止(1988年に解除)

1952

4/28 サンフランシスコ平和条約発効、日華平和条約締結。

1958

5/15台湾警備総司令部を設立し戒厳実施機関を統合、言論・思想の取り締まりにあたり、「警総」の名で恐れられた

1960

1960

2/28 台湾青年社が東京で結成
4/10 雑誌『台湾青年』創刊(写真)
9/4 『自由中国』事件発生、責任者の雷震が逮捕され、雑誌停刊。雷震グループと非国民党の台湾人地方政治家が連合した「中国民主党」結成も挫折

1964

7/23 「陳純真スパイ事件」発生、黄昭堂ら7名が警視庁に逮捕される
9/20 台湾大学教授の彭明敏らが「台湾人民自救運動宣言」を起草、 発表前に印刷所が捜索を受け、彭明敏・謝聡敏・魏廷朝逮捕

1965

9月 台湾青年社は台湾青年独立連盟に改組

1968

1968

2月 左翼台湾人学生陳玉璽の強制送還事件につき、川田泰代が救援活動を展開

1969

台湾青年独立連盟の黄昭堂ら、彭明敏救援活動を開始
2/21 日本への留学生陳中統、帰省中に逮捕、岡山大学の教員と学生が救援活動

1970

1970

1/1台湾独立連盟発足、ニューヨークに総本部
1/3 軟禁中の彭明敏が阿部賢一、宗像隆幸らの協力の下、別人になりすまして台湾を脱出

1971

10/25 中華人民共和国が国連に加盟、中華民国は国連を脱退。
12/29 台湾キリスト教長老教会が第1回「国是声明」を発表(1977年までに3回の声明を発表し、台湾住民自決と民主化を呼びかける)

1972

9/29 日本が中華人民共和国と国交樹立、中華民国と断交
12/1 テレビの台湾語番組放送制限(1993年解除)
リン・マイルス(Lynn Miles)が日本で雑誌『浪人』を創刊、アジアの人権問題に関する情報を発信

1973

2/17 在日台湾同郷會設立

1975

1975

4/5蔣介石死去
8月『台湾政論』 創刊。創刊後まもなく発禁(写真)
リン・マイルスが「台湾人権擁護国際委員会(International Committee for the Defense of Human Right on Taiwan,略称ICDHRT)」設立

1976

10/1 アムネスティ・インターナショナルによる「国際特赦組織簡報:台湾(Amnesty International Briefing: Taiwan)」を正式発表 米国で「台湾婦女維護人権委員会」発足、後に「台湾人権協会」に

1977

1977

5/1 「台湾之音」ニューヨークで開始
6/15 米国下院で台湾人権公聴会実施、台湾の人権問題が初めて米議会で議論の対象に
7/24 「台湾の政治犯を救う会」東京で発足(写真:左)
11/11桃園県長選挙をめぐる不正事件に抗議する民衆が警察署を包囲 (中壢事件)(写真:右)

1979

1979

1/1 米国が中華人民共和国と国交樹立、中華民国と断交、台湾に対する米国の基本政策を規定した「台湾関係法」施行 
6月 『八十年代』創刊。8月『美麗島雑誌』創刊(写真)
12/10 美麗島雑誌社主催の人権デーのデモは、住民と警察が衝突する流血事件に。反体制運動の指導者らが大量に逮捕され、台湾民主運動の分水嶺とされる美麗島事件に発展

1980

1986

2/20 美麗島事件公開公判(写真)、国際人権組織団体が美麗島事件の裁判を傍聴
2/28 美麗島事件で逮捕された林義雄一家の惨殺事件が発生(林義雄の母親と双子の娘が自宅で殺害され、長女は重傷を負う)

1981

7/3 陳文成事件発生。米国から帰省中の陳文成教授が警総に連行され、翌日台湾大学構内で遺体となって発見される
11/14 地方選挙実施、党外(国民党以外の政治勢力の集合体)の陳水扁、謝長廷らが台北市議に当選

1983

12/3 増加定員選挙実施、党外選挙後援会は「台湾前途の住民自決」を掲げる

1984

10/15 江南事件発生。『蔣経国伝』を出版した劉宜良(ペンネーム:江南)がサンフランシスコ郊外の自宅で殺害される
12/10 世界人権デーに「台湾人権促進会」発足
12/29 台湾先住民族による最大の市民運動団体「台湾原住民権利促進会」発足 (1987年に「台湾原住民族権利促進会」に改称)

1986

1986

9/28 民主進歩党の結成

1987

1987

2/13 二二八事件の見直しを求める社会運動開始
7/14 戒厳令解除、同時に政治犯の控訴および上告の権利などを剥奪する「動員戡乱時期国家安全法」発効(金門、馬祖の戒厳令解除は1992.11.07)。

1988

1/1 新規新聞発行禁止を解除
1/11 集会遊行(集会・デモ)法の発布
1/13 蔣経国死去、李登輝が総統就任

1989

1989

4/7 『自由時代』編集長の鄭南榕が国民党政府の言論弾圧に抗議して焼身自殺
8/19 最初の二二八紀念碑(嘉義市)除幕

1990

1990

3/16 野百合学生運動(写真)
5/6 「軍人の政治干渉反対」の大規模デモ
5/20 李登輝が第八代総統就任、特赦令公布
6/28国是会議の開催

1991

1991

5/1 「動員戡乱時期臨時条款(反乱鎮圧動員時期臨時条項)」を廃止
5/20 学生運動団体は反政治迫害の大規模デモを行い、刑法100条の廃止を要求(写真)
5/22 「懲治叛乱条例」を廃止
5/24 「戡乱時期検粛匪諜条例」を廃止

1992

5/16刑法100条改正により、白色テロ期が終了。「政治犯」消滅
7/7 ブラックリスト掲載者277名の帰国禁止令の解除
7/31 台湾警備総司令部を廃止
12/19 立法院(国会)全面改選

1994

12/3台湾省長および台北市長、高雄市長の直接選挙実施

1995

1995

2/28 ​​新公園(台北市)の二二八紀念碑除幕。総統の李登輝が政府を代表して政治犠牲者及び全国民に謝罪

1996

3/23 史上初の台湾総統直接選挙、李登輝が当選、民選総統に

1997

1997

2/28 台北二二八紀念館開館、2月28日が「和平紀念日」として祝日に
9/1 中学校で「認識台湾(台湾を知る)」の新教科開始

1998

9/30 小・中学校の新学習指導要領(総則)発表。人権教育が7つの重大議題の1つに位置づけられる(2001年度実施)

1999

6/23 「教育基本法」公布

2001

4月 教育部人権教育委員会設置

2004

3/20 全国初の国民投票実施
6/23 「性別平等教育法(ジェンダー平等教育法)」施行

2005

2/5 「原住民基本法(先住民基本法)」制定
6/15 行政院は8月1日を「原住民族日(先住民族の日)」とすることを決定

2007

12/29 移行期正義の活動に取り組む市民による「台湾民間真相及び和解促進会」 発足

2011

2011

2/28 二二八国家紀念館開館

2014

2014

3/18 中国とのサービス貿易協定に反対するひまわり学生運動発生

2016

8/1 総統の蔡英文がこれまでの不平等な扱いを先住民族に謝罪

2017

12/5 立法院で「移行期正義促進条例」可決

2018

2018

3/15 国家人権博物館設立、5/18開館
5/13行政院所管の促進転型正義委員会(移行期正義促進委員会)設置

2019

5/17 立法院で「同性婚を認める特別法」可決

2021

2021

2/2 国立台湾大学で陳文成事件紀念広場の除幕式を挙行
9/15 日本で「国家人権博物館特別展 私たちのくらしと人権」開催

【参考文献】
若林正丈『台湾―変容し躊躇するアイデンティティ』
ちくま新書、2001年

人権之路編集委員会『人権への道―レポート・戦後台湾の人権』
財団法人陳文成博士記念基金会、2007年

何義麟『台湾現代史: 二・二八事件をめぐる歴史の再記憶』
平凡社、2014年

国家二二八記念館特別展|二・二八事件と台湾独立運動

1945 : 二二八国家記念館/ 1947 : 二二八国家記念館/ 1949:廖為民 / 1970:財団法人彭明敏基金会 / 1975:廖為民 / 1977:(左)手塚登士雄(右)国家档案資訊網 / 1979:手塚登士雄 / 1980:中央社 / 1986:張芳聞 / 1990:国立中正紀念堂 / 1991:邱萬興 / 1995:(左)二二八国家記念館(右)何義麟​​ / 1997:何義麟 / 2011:二二八国家記念館 / 2014:林雨佑 / 2018:国家人権博物館 / 2021:栖来ひかり